事例情報の出し惜しみする不動産会社とは媒介契約するな

 不動産会社だけが参照できる、レインズでは、過去に成約した事例と、現在売り出されている事例の2つを参照することが出来ます。
 成約事例は、実際に成約した年月日まで出ています。ですので、「ここ1年間でこういった事例があります」という事は、全部把握ができます。現在売りに出されている事例で言えば、現在、周辺で売られているマンションの売出価格が分かります。
 この2点を参考にして査定価格を付けているわけですが、一般的には、過去の成約事例の方を見る会社が非常に多いです。「半年前、同じような物件が4,000万円で売れている。それから半年経過しているので、3,000万円くらいです。」なんて判断です。(これを時点修正と言います。)
 実際に、あるマンションで不動産会社10社に依頼した査定価格の差が1,000万円以上あったこともあります。このマンションは総戸数200戸程度で、築年数も10年ほど経過し、多数の成約事例、売出事例があったにもかかわらずです。
 このことからも、実際の査定方法は会社や担当者で異なり、各社で査定価格算出の根拠には違いが存在していることが分かります。
 通常、マンションの売出価格は、一戸建てや土地の査定とは違います。価格に差が出にくいと言われています。特に大規模なマンションでは自宅と同じタイプが多数あり、同じタイプで成約や売出の事例があれば、各社がその事例を参考に査定するからです。
 ですので、本来、売りたくないお客さんにデータを知らせて、「過去にこの値段で売れており、現在、似たような物件がこのくらいで売り出されています。大体、この査定価格になります。」と情報を共有しながら、一緒に考えればいいのです。
 レインズと言うデータベースがある事を知っているお客さんが、「成約・売出中の事例をもっと教えてください。」と言っても、抵抗を示す不動産会社は少なくないでしょう。データを完全に開示してしまうと、お客さんが知らない情報を持っている事が、不動産会社の財産だからです。データを完全に開示してしまうと、お客さんにとって不動産会社を頼る価値が無くなってしまうのです。
 しかし、「情報化社会」の到来で、どの業態でも、顧客との情報ギャップはなくなってきています。これまでの不動産業界では、「物件情報」を提供することが、お客さんにとっての価値でした。インターネットが無かった時代では、お客さんが物件を知るためには、不動産会社に頼るしかなかったのです。ですが、インターネットで物件を容易に検索が出来てしまいますから、そもそも、情報提供ということに価値が無くなってきているのです。
 不動産会社の実力が本当に試される時代になってきたと言っても過言ではないでしょう。物件情報そのものではなく、提供するサービスの質で勝ちを提供していく、そんな変化を迫られていると言えるでしょう。物件査定に関する不動産会社の対応を見ることで、その会社が何で勝負をしているのかを見極める事もできるのです。物件情報(売り出しや成約の事例)を出し惜しみする会社は、疑ってかかりましょう。

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