2017-05-15
確定申告 | 不動産売却 | 年金 | 保険料 | 譲渡税
不動産を売却した場合、その売却益は譲渡税の対象となります。これは確定申告が必要ですが、青色申告の対象にはなりません。居住用の不動産であれば税金については特例があります。不動産を売却したことで保険料は上がることがありますが、年金には基本影響はありません。
年金受給者が不動産売却した際の経済的負担について。
1,不動産を売却した時の税金の原則について。
2,居住用の不動産なら所得税の特例があります。
3,譲渡所得として確定申告をしましょう。
4,不動産の売却と年金や保険料について。
1,不動産を売却した時の税金の原則について。
不動産売却によって収入を得ると、譲渡所得として所得税がかかります。譲渡所得とは、収入金額から、取得費と譲渡費用を引いた売却益を指します。取得費とはその不動産を購入した際に払った購入代金・仲介手数料・登録免許税や不動産取得税などの税金、設備費や改良費などです。購入したのがずいぶん昔のことで分からない場合、収入金額の5%を取得費とすることができます(概算取得費)。
また、譲渡費用とは、今回不動産を売却するにあたって必要となった費用で、仲介手数料や印紙税、取り壊し費用などです。この所得に対する税率ですが、所有期間によって譲渡税は大きく異なります。売却した年の1月1日時点の所有期間が5年以下の場合は39%(所得税30%住民税9%)も掛かります(短期譲渡所得)。5年を超えていれば20%(所得税15%住民税5%)となります(長期譲渡所得)。
2,居住用の不動産なら所得税の特例があります。
居住用の財産(自宅やその土地)を売却した際の譲渡税の計算には特例があります。まずは、所得金額から3000万円を控除するものです。これは所有期間が短期でも長期でも利用できるものです。ただ、居住しなくなってから3年経過後の12月末日までに売却することなどの条件はあります。
さらに、売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えている場合は、3000万円控除した後の金額について掛かる税率についても軽減されます(ただし6000万円まで)。軽減された税率は14%(所得税10%住民税4%)です。
その他にも、買い替えた場合には別の特例があります。売却した年の1月1日時点の所有期間が10年を超え、住んでいた期間が10年以上の居住用財産を1億円以下で売却した場合、税金の支払いを翌年以降繰り延べることができます。ただ、これは「居住用財産の3000万円の特別控除」や「居住用財産の軽減税率の特例」を受けている人は使えません。ちなみに不動産売却で売却益がでず、損失が出た場合も特例があるので税務署に問い合わせてみましょう。
3,譲渡所得として確定申告をしましょう。
不動産を売却した収入は譲渡所得として所得税の対象となります。
これは申告分離課税です。申告というのは、納税者が自分で税額を計算するものです。本来給与所得もそうなのですが、会社が代わりに行ってくれていました。分離というのは、他の給与所得や不動産所得(賃貸収入など)は所得税の計算時に合算しますが、不動産の譲渡所得は別に計算するということです。
つまり、不動産を売却した収入については自分で確定申告をしなければならないのです。確定申告時に青色申告をすれば所得控除の金額から控除が受けられるという制度がありますが、不動産の売却による収入は青色申告の対象にはならない場合がほとんどでしょう。青色申告ができる所得は不動産所得と事業所得と山林所得です。この不動産所得というのは不動産の貸付による所得であって、売却した際の収入は譲渡所得になり青色申告はできません。
土地が山林であれば山林所得になるかもしれませんが、居住用の不動産ではあてはまらないでしょう。
4,不動産の売却と年金や保険料について。
不動産を売却して所得が増えたことによって、医療保険については経済的負担が生じます。
国民健康保険や、75歳以上が対象となる後期高齢者医療制度では、前年の所得によって保険料の金額が変わってくるためです。
そのため、前年の所得が高かった場合、負担が増えることになります。一方、年金には基本的に関係ありません。
こちらは、それまで払ってきた納付期間、および、報酬に比例して納付してきた金額によって給付額が決まります。
支給開始後も会社に残って仕事をしている場合に(在職老齢年金)、月収によっては報酬以外の部分が支給停止になることはありますが、あくまで会社から支払われる報酬についての話です。不動産の売却で得た収入とは関係がありません。
後期高齢者医療制度では、原則として保険料が年金からの天引きとなっているため、年金が減ったかのように感じるかもしれませんが、これは年金が変わったのではなく保険料が変わったためです。