売却のために不動産会社に査定を依頼すれば、報告書(不動産査定書)が届きます。この報告書は、自身のみならず買主に物件の詳細な情報を共有する上でも役立ちます。他にも報告書の内容を比較し、契約する不動産会社を選ぶ際の基準ともなる重要な書類です。特に中古住宅には定価が存在しないため、不動産会社に依頼して見積もりを出してもらうことが必須となります。この不動産査定書には、大きく分けて3つの種類があり会社によって書式が異なります。ここでは、不動産会社が発行する不動産査定書について、詳しく解説していきます。 もくじ 1.机上査定よ訪問査定 2.不動産の詳細情報 3.不動産の査定項目と結果(評点) 4.査定結果(事例単価・流動性比率) もくじ 1.机上査定よ訪問査定 不動産査定の方法は、机上査定と訪問査定の2種類が存在します。まずインターネットなどを通じて机上を依頼して業者を絞り込み、それを踏まえて訪問依頼する流れが多いです。机上査定は、周辺地域の相場や類似物件の売却額を基にした簡易な査定価格のことです。一方、訪問査定は業者が部屋の状態に加えて道路や境界の位置関係を詳細に確認し、その結果得られた精度の高い査定を指します。 その結果として送付されるのが、不動産売却提案書です。不動産売却提案書とは、文字通り不動産の売却を検討している人へ業者から渡される提案書のことです。書式としては現在の不動産市況や売却予定の物件の市場での立ち位置、地域性や間取りなど物件特性から想定される顧客の動向について記載されます。物件調査や不動産査定額だけでなく、広告活動なども不動産売却提案書の書式に取りまとめられています。提案書がどんなものか知りたければ、不動産流通センターなど特定の法人のホームページなどで書式ダウンロードが可能です。 2.不動産の詳細情報 不動産の詳細情報とはその名の通り、物件に対しての詳しい情報がまとめてある書類です。建築物についての書式は建物の名前や所在地(住所)、専有面積などが記されています。間取り・方位と構造の他にマンションやアパートであれば、納戸数や所有階なども記載します。建築年月や取引事例年月に関して、取引単価・価格に加えて最寄り駅なども表記されているのが一般的です。 不動産は建物だけでなく土地も含まれるため、当然ながら書式や記載事項も少しずつ異なります。所在地や面積、建ぺい率や容積率など建物に関わる表記をはじめ、交通や都市計画など周囲の環境に関しての情報も盛り込まれるのが普通です。他にも用途地域や、固有の地域名がある場合はその地名も記されます。 不動産会社によっては、書式ダウンロードが可能な場合もあります。見積もりを依頼する前に参考にしたい場合は、あらかじめ書式ダウンロードを行って様子を見ると良いでしょう。 3.不動産の査定項目と結果(評点) 不動産に対してどこを評価したのかが、記載されている書類です。この書類を作成する場合、ある程度決まった項目をチェックするのが通例です。それぞれの必要項目をスコアリング、つまり評点して総合点数で査定価格を算出します。建物の場合は最寄り駅までの距離をバスや徒歩で測定した結果や、生活の利便性もチェックされます。中古住宅において特に重要になるのが築年数であり、新築はもちろん中古住宅にはダイレクトに影響される箇所です。建物のグレードについては、戸建て・賃貸に関わらず評価される部分であり、中古住宅はリノベーションや修繕などの状態も参照されます。駐車施設の有無や階数、方位・向きや間取りなど物件の詳細情報に記されている部分はチェックされると思って良いです。アパートやマンションの場合は、角部屋や階など位置の問題や騒音・振動、管理人の勤務形態まで見られます。一方土地については駅までの距離や周囲の利便性、前面道路の状況など建物と似たような部分から、排水施設や街路の整備などより広い範囲の環境も判断基準です。 4.査定結果(事例単価・流動性比率) 評点の結果が出たら、事前に調べておいたベースの費用に適用させて本格的な査定価格が決定します。ベースの価格・費用に関しては建物であれば原価法、土地であれば路線価などによって算出することが多いです。土地の費用を算出する場合はまず査定地本来の路線価と評点を、公示のそれぞれの値で割ります。割り算で求めた路線価に公示地価の単価をかけ合わせて、もう1つの割り算で出た評点の値と査定地の面積をかけ合わせて、その積同士をさらにかけ合わせたのが土地の不動産査定結果です。 一方で建物の不動産査定結果の算出は、売却する建物の評点を成約事例の評点で割り、それに過去の成約事例の不動産単価と面積をかけます。この方法で算出した価格を、流動性比率で補正することにより本決定するという訳です。流動性比率は、そのタイミングの市場に出回っている競合と比較し、対象の不動産が売れやすさを数値化したものとなります。 また原価法とは別に、収益還元法が用いられることもあります。収益還元法とは、不動産の収益性に注目して評価を行う方法です。なお収益還元法には直接還元法とDCF法の2種類が存在し、状況に応じて使い分けることで有利になります。