事業用建物の購入なら消費税が還付になる?

★課税売上高より課税仕入高の方が多い場合
 納付する消費税は、賃料収入(課税売上)にかかる消費税から賃貸経費(課税売上)にかかる消費税を控除した金額ですが、それでは、賃料収入(課税売上)より賃貸経費(課税仕入)の方が多い場合には、どのようになるのでしょうか?この場合は消費税が還付になります。
「賃料収入より賃貸経費が多いという事は、大幅に赤字ではないか?そんなことがあるのか?」と言う疑問が出くわすかもしれませんが、賃貸ビルを建築した年とか、建物に大規模な修繕を施した時などは経費の方が多くなります。したがって、新たに非住居である賃貸建物を建てて賃貸しする場合には、消費税が還付になる可能性があるのです。
 ただし、黙っていては、消費税が還付されませんので、そのような手続きが必要かを次の事例で見ていきましょう。
【事例】
 横谷さんは、その所有する150坪の土地を月ぎめ駐車場として賃貸しています。全部で30台の駐車スペースがあり、1台あたり、1万円で賃貸しているので、毎月の賃料収入は30万円です。
 このたび、駐車場として賃貸していた土地にコンビニを建てて、賃貸することにしました。コンビニへの賃貸料は、1か月63万円の予定です。
 横谷さんの平成19年の年間賃貸収入(平成17年、18年も同じとする)は、月ぎめ駐車場の収入しかないので、年間360万円です。課税売上(駐車場収入分)が1,000万円以下のため、消費税は免税事業者です。
 横谷さんが、平成20年に6,300万円(消費税込)の建築費でコンビニへ賃貸する建物を完成させた場合、どのような手続きをすればよいのか?消費税がいくら還付されるのでしょうか?
①	コンビニが完成した平成20年の課税売上及び課税仕入れ(消費税込)
コンビニの建築に着手したのは平成20年の4月であり、関税したのは7月末です。したがって、平成20年3月までは、月ぎめ駐車場の賃料収入があり、8月からはコンビニから賃貸収入が毎月63万円入ってきます。
<課税売上>
・月ぎめ駐車場の賃料収入(3か月分)90万円
・コンビニからの賃料収入(5か月分)315万円
<課税仕入>
・コンビニ建物の建築費6,300万円
・手数料等のその他の課税仕入れ42万
②	平成21年以降の毎年の課税売上の状況(消費税込)
<課税売上>
・コンビニからの賃料収入756万円

【還付手続きの手順】
①	平成19年末までに「消費税課税事業者選択届出書」を提出する
横谷さんは、課税売上が1,000万円以下で免税事業者ですから、消費税の申告及び納税義務はありません。このような場合、自ら消費税の課税事業者になりたいと申し出ることによって、消費税の課税事業者になることができます。
 ただし、消費税の課税事業者になるためには、課税事業者になろうとする年の前年12月31日まあでに「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなければならないため、一般的には建物が完成する年の前年末日までに提出する必要があります。
②	平成20年分の消費税の還付金額は439万円
ア、	課税売上にかかる消費税額405万円×8/108=30万円
イ、	課税仕入にかかる消費税額6,342万円×8/108=469万円(※計算の便宜上、端数切捨て)
ウ、	納付すべき消費税額 アーイ=439万円

なお、平成20年3か月分の月極め駐車場収入は1台あたり1万円で、借主から特に消費税をとっていないのに、なぜ消費税がかかるのだろうか?という疑問を感じるかもしれません。消費税の課税事業者になった場合は、借主から特に消費税分としてとっていなくても、その賃料収入には、消費税が含まれているとして取り扱われます。したがって、課税事業者となった人が、以前のままの賃料で据え置いた場合は、実質的には消費税分の値下げをしたことになります。

③	平成21年末までに「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出する
本来、課税売上が1,000万円以下の場合は免税事業者であるのに、横谷さんの場合は、消費税の還付を受ける為に敢えて、消費税の課税事業者になりました。この場合は、たとえ、課税売上が1,000万円以下であっても自分で課税事業者を選択したわけですから、「課税事業者選択不適用届出書」を提出しなければ、ずっと課税事業者として、翌年からは消費税を納税することになってしまいます。
 ただし、消費税の課税事業者を選択したら2年間は免税事業者に戻れないので、この場合は、平成21年末までに不適用届出書と提出して、平成22年から免税事業者に戻るようにするわけです。

なお、このような手続きで消費税の還付が受けられるのは、店舗や事務所などの非住居系の建物を建築した場合です。アパートやマンションなどの住居として賃貸しするものは、もともと住宅家賃が非課税のため、消費税の還付は受けられません。

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