2014-11-08
相続時精算課税 | 一般贈与 | 非課税 | 税率 | 相続税
★「相続時精算課税制度」ができた趣旨
相続時精算課税制度は、平成15年1月1日以降の贈与から選択することが出来るようになったもので、「経済活性化の切り札」として創設された新しい制度です。
贈与税は、相続税の課税を免れるための生前贈与を防ぐという趣旨から、高い税率を課して、贈与を行いづらくしました。しかし日本では、年間100万人が死亡するのに対して、相続税が課税されるほどの財産を残す人はわずか4万数千人であり、ほとんどの人が相続税とは無縁となっています。その為、贈与税と相続税の垣根を取り払い、早めに若い世代に財産を転移させやすくして、若い世代にお金が回りやすくしようというのが、この制度を創設した狙いです。
★「相続時精算課税制度」のしくみ
相続時精算課税制度の適用は、贈与をする人が65歳以上の父または母で、贈与を受ける人が原則として20歳以上の子供の場合に限られます(この年齢は、贈与があった年の1月1日現在)。ここで贈与者は「父または母」ですから、父と母から別々に贈与を受けて、両方ともこの制度を利用することもできますし、父からの贈与は相続税清算課税制度の適用を選択し、母からの贈与は選択しないで従来の贈与の制度(一般贈与)を適用するといった対応もOKです。
ただし、この相続時精算課税制度は選択して初めて適用できるものですから、その届出をしなければ、従来の一般贈与となります。
あお、相続時精算課税制度を選択した場合は、その贈与者から贈与してもらった金額を毎年累積し、累積された贈与金額が2,500万円を超えた場合には、20%の税率で贈与税を仮に納税し、相続発生時に清算することになります。
ということは、父から2,500万円、母から2,500万円、合計5,000万円までの贈与は、この制度を利用することで、相続の開始まで贈与税を支払うことなく財産を有効活用できるという訳です。
★相続時精算課税制度を適用する時の注意点
相続時精算課税制度の適用を受けるためには、その旨を届け出しなければなりませんが、一度、相続時精算課税制度を選択すると、それ以降、その親からは相続の開始のときまでずっと相続時精算課税が継続して適用されます。つまり、相続時精算課税制度は一度選ぶと、もう一生、その親からは一般贈与の適用はなくなるということです。
しかし、特別な資産家でない限りあまり心配することは無いでしょう。この制度創設の目的は、日本経済の活性化を図る事です。つまり、金融資産を抱えている高齢者から金融資産を吐き出させて、子供世代にお金が回るようにし、消費を活性化させていこうというものであり、とりわけこの世代が初めてマイホームを取得しやすくするというのが、この制度の狙いです。
したがって、相続のときにはまず相続税は課税されないだろうという一般的な資産状況の人であれば、相続時精算課税制度を積極的に活用して、相続まで待たずに子供がお金を使えるようにしてあげるという事は良い事だろうと思います。一方、相続時に相続税が心配な資産家は、後で後悔しないように、税理士等の専門家に相談してから適用するかどうか決めた方が良いでしょう。
【相続時精算課税制度と一般贈与の違い】
★相続時精算課税制度
・贈与者:65歳以上の父または母
・受贈者:20歳以上の子供(代襲相続人を含む)
・非課税:相続開始までの累計で2,500万円
・税率:受贈額2,500万円を超えた分の一律20%
★一般贈与
・贈与者及び受贈者に制限なし
・非課税:年間110万円(基礎控除額)
・税率:基礎控除を超えた分の10%~50%