建物の取得費は減価償却費を差し引きます。

★「減価償却」とは何か?
 土地の価値は、年数が経過しても変わりませんが、建物は老朽化などにより資産価値が減少していきます。この資産価値の減少部分を、税法で決められた「耐用年数」に割り当てて経費化していくことを「減価償却」と言います。建物の譲渡所得を計算する際の「取得費」は、取得した際の価格ではなく、減価償却相当額を控除した残額です。(下記の算式参照)耐用年数を過ぎた場合は、取得価格の5%が取得費になります。

購入代金 - 減価償却相当額 = 建物の取得費
※購入代金とは、通常の取得費の事です。

★減価償却相当額の計算の仕方
 減価償却相当額は下記の算式によって求めますが、その建物が木造なのか、鉄骨なのかといった建物の構造によって、耐用年数が異なります。また、その建物の仕様が住宅なのか、事務所なのか、店舗なのかと言った使用の細目によっても耐用年数が異なります。
 算式にある通り、耐用年数に応じた償却率によって計算するわけですが、非業務用(自宅や別荘、子供への使用貸借など)の場合には、耐用年数を1.5倍にして計算した耐用年数に応じた償却率により計算します。

 購入代金×0.9×償却率×経過年数=減価償却相当額

【事例】
 横谷さんが平成10年4月に3,000万円で新築した建物を、平成19年8月に2800万円で売却した場合の譲渡所得はいくらになりますか?
 なお、建物は木造で横谷さんの自宅として使用しています。
【計算結果】(計算の便宜上、土地の売却代金と譲渡費用は考慮しないものとします)
<減価償却相当額の計算>
3,000万円×0.9×0.031×9年=753万3,000円
※非業務用資産の場合の経過年数は、6か月以上は1年とし、6か月未満は切り捨てます。
<建物の取得費の計算>
3,000万円-753万3,000円=2,246万7,000円
<譲渡所得の計算>
2,800万円-2,246万7,000円=553万3,000円
 上記の計算でわかるように、建物は減価償却額相当を差し引いた後の金額が取得費となるため、たとえ購入金額よりも売却代金の方が低かったとしても、利益(譲渡所得)が発生することになります。
【主な建物(住宅用)の耐用年数表】
◆木造(業務用)
耐用年数22年、償却率0.046
◆木造(非業務用)
1.5倍した耐用年数33年、償却率0.031
◆木骨モルタル造(業務用)
耐用年数20年、償却率0.05
◆木骨モルタル造(非業務用)
1.5倍した耐用年数30年、償却率0.034
◆(鉄骨)コンクリート(業務用)
耐用年数47年、償却率0.022
◆(鉄骨)コンクリート(非業務用)
1.5倍した耐用年数70年、償却率0.015
◆(金属造)骨格材3ミリ以下 (業務用)
耐用年数19年、償却率0.052
◆(金属造)骨格材3ミリ以下(非業務用)
1.5倍した耐用年数28年、償却率0.036
◆(金属造)骨格材3ミリ超、4ミリ以下(業務用)
耐用年数27年、償却率0.037
◆(金属造)骨格材3ミリ超、4ミリ以下(非業務用)
耐用年数40年、償却率0.025
◆(金属造)骨格材4ミリ超(業務用)
1.5倍した耐用年数34年、償却率0.03
◆(金属造)骨格材4ミリ超(非業務用)
1.5倍した耐用年数51年、償却率0.02

上記の計算例は、自宅(非業務用)を例に計算しましたが、事業用として自身の事務所や店舗で使用していた場合や、アパートや貸家として賃貸していた場合は、毎年の確定申告で、事業所得や不動産所得を算出するために、減価償却費を計算し経費として、計上しているはずなので、その自分の経費として計算した減価償却費の合計額が減価償却相当額となります(定率法で計算していた場合は、定率用による未償却残高が減価償却費を引いた後の取得費です)。

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