2014-12-12
自宅 | 買い替え | 税金 | 繰越控除 | 計算
自宅を買い替えた時の譲渡損失の損益通算および繰越控除について、事例に基づいて実際に計算してみましょう。
【事例】
日塔さんは、平成19年6月に自宅を4,000万円で売却しました。この自宅は、平成3年に7,000万円で購入したものです。そして日塔さんは、平成19年10月に80㎡の新築マンションを自己資金半分、住宅ローン半分で購入し、現在はここに住んでいます。
日塔さんの譲渡が「住居用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等」の要件を満たしているモノとした場合に、毎年の所得税、住民税がいくら安くなるか計算してください。
① 譲渡損は「4,000万円-7,000万円=△3,000万円」として計算します。
② 日塔さんはサラリーマンで、平成19年の給与所得は1,000万円とし、扶養控除等の所得控除は250万円とします。
なお、計算の便宜上、平成20年以降の給与所得と所得控除額も平成19年と同じとして計算します。また、住民税の所得控除額も所得税の所得控除額と同じとして計算する。
【譲渡損失がなかったものとした場合の毎年の所得税と住民税】
① 給与所得(給与収入1,000万円-給与所得控除額220万円)780万円
② 所得控除額250万円
③ 課税所得(①-②)530万円
④ 税額
(ア) 所得税 530万円×20%-42万7,500円=62万2,500円
(イ) 住民税 530万円×10%=53万円
(ウ) 税金合計((ア)+(イ))=116万2,500円
【「繰越控除の特例」と損益通算】
・1年目(売却年度)
780万円(給与所得)+△3,000万円=△2,220万円
・2年目(売却の翌年度)
780万円(給与所得)+△2,220万円=△1,440万円
・3年目
780万円(給与所得)+△1,440万円=△650万円
・4年目
780万円(給与所得)+△650万円=120万円
120万円<250万円(所得控除額) ∴課税所得 0
日塔さんの場合は、上記の計算にあるように、本来、所得税、住民税として毎年116万2,500万円の税金を納める訳ですが、譲渡損失を毎年の給与所得と通算すると、3年目まで譲渡損失の繰越赤字が給与所得を上回り、4年目になると給与所得が譲渡損失の繰越赤字を上回りますが、所得控除を差し引くと、4年目の課税所得もゼロとなります。従って、平成19年から4年間は所得税、住民税ともゼロとなります。
つまり、「116万2,500円×4年分=465万円」の税金が安くなることになるわけです。
具体的に示すと、所得税は給与から源泉徴収により天引きされていますが、確定申告を行うことにより、毎年(4年間)、源泉徴収された税額の全額が還付されます。住民税は1年遅れで給与から天引きされますが、平成20年から4年間は住民税の特別徴収額もゼロになっています。