事業用の買換えは課税の繰延べが行われます。

★買換え特例の思わぬ注意点
 前項の計算式では、「買換え特例」を適用した場合の譲渡税が360万円で、適用しなかった場合の譲渡税が1,800万円でした。
 この計算事例を考えると、「1,000万円以上も税金が安くなるのなら、買換え特例を使用した方が絶対にお得です。」という気がします。
 では、買換え特例に「落とし穴」は存在しないのでしょうか?

 居住用の買換え特例の説明でも説明したように、買換え特例は「課税の繰延べ」といって、課税の先延ばしをする規定です。
 譲渡税は、買った値段と売れた値段の差です。利益(譲渡益)に対して、課税されるわけですが、買換え特例を適用した場合は、売却した不動産の「利益」を先送りして、買換えた資産に付け替えましょう。という事になるのです。

◆買換え特例を利用した場合
(売却したマンション)
売却代金全体で1億円で、利益(譲渡益)が9,000万円とし、必要経費(取得費+譲渡費用)が1,000万円のケースで、これを売却代金1億円で買換資産を購入したとします。
(買換えたマンション)
購入代金全体が1億円で、先送りした利益が9,000万円で、引継ぎ価格(税務上の購入価額(帳簿価額))になります

上述の事例にあるように、売却したマンションの利益である9,000万円について、課税を先延ばししようというのが、「買換え特例」になります。
 つまり、この1億円を買値とはしないで、元の売却したマンションの原価(必要経費)である1,000万円を新たに建築したマンションを7,000万円(計算の便宜上、減価償却費は考慮しない。)で、売却するので、本来は3,000万円の赤字になります。しかしながら、買換え特例を適用している場合は、税務上の買値(帳簿価額)は1億円ではなく1,000万円ですので、6,000万円の利益(7,000万円-1,000万円)が出たものとして、この買換えたマンションの売却時に課税されることになるのです。

 なお、事業用資産の買換えは、80%の買換えしか認めていないので、下の事例のように、実際にはもっと複雑な形になります。

◆事業用の買換えは、80%が限度という事を考慮すると…。
(売却したマンション)
売却代金全体:1億円
内訳
・利益(譲渡益)
9,000万円
(繰り延べた利益9,000万円×80%=7,200万円)
・必要経費
1,000万円(取得費+譲渡費用)

上記を売却代金1億円、1億円で買い替え資産、以下を購入。

(買換えたマンション)
購入代金全体:1億円
内訳
・先送りした利益
9,000万円×80%=7,200万円
(※以下、税務上の購入価額(帳簿価額)2,800万円)
・繰り延べなかった部分
9,000万円×20%=1,800万円
・引継ぎ価額
1,000万円

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