中古住宅などの販売の活性化を目的として、改正宅地建物取引業法が国会で成立しました。どういった法律なのか?分かりやすく言うと、適正な住宅診断を行い、中古住宅の売買成立件数を増やすことを目的としています。では、具体的にどういった法律なのか?見ていきます。 この法律では、中古住宅を仲介する不動産会社に、販売する側の売主、購入する側の買主に対して、住宅診断を行うかどうかを確認することを義務付ける法律です。 現在、日本では、空き家の数が増加傾向にあり、2013年で約820万個で、国内住宅の総数に対して、1割強というかなりの数の空き家がありましたが、2014年になると、さらに1400万個に増えるという試算が出ている。少子高齢化が進めば進むほど、この空き家率は膨れ上がっていくことでしょう。 そこで、空き家が発生することを防ぐことを目的に、成立したのが、この改正宅地建物取引業法で、買主が安価な価格で住宅を取得するために、中古住宅の取引を活性化する必要があるということがこの法律の起源だ。日本の住宅の流通個数の中の中古物件は2013年の段階で、全戸数の14.7%程度で、欧米の比率と比較すると圧倒的に少ない事が分かる。 買主が中古物件に対する興味が薄いのは、住宅のクオリティが見えてこない点だ。事実、購入後に買主が購入物件に不具合があることを見つけて、問題になった例もあります。雨漏りや、傾斜であったり、それ以外にも、特に、東日本大震災や熊本地震の影響を受けて、住宅の耐震性への関心も一段と高まっている。 そういった理由を元に、国土交通省が打ち出してきたのが、物件の買主や売主から見た第三者の建築士などが、ひび割れや雨漏りのような物件の劣化状況を調べる住宅診断の普及です。これは、海外、主にアメリカなどでは、インスペクションと言い、中古の不動産物件の買主の8割が実施しており、日本では、まだ、普及していない。 今回の改正宅地建物取引業法では、物件を仲介する不動産業者が買主に対して、住宅診断を行うか確認して、実施した場合は、その診断の結果を買主に対して開示するということが法律で義務付けられました。また、売買が成立した売買契約の際には、物件の基礎の部分や壁面、外壁などの状況を書面で買主、売主に示すことも、併せて明記されている。 住宅診断を行えば、物件の安全性などが明確になり、買主の購入後のリフォーム計画もスムーズに、物件状況を把握したうえで契約できるので、購入後のトラブルを未然に防止することも可能になっていくだろう。 とはいえ、この法律があれば、買主からの購入意欲の加速につながるかと言えば、この法律が正しく実施されるのかが、ポイントになります。おそらく一般的には、仲介する不動産会社が第三者と呼べる建築士を斡旋して、住宅診断を依頼する形にはなるでしょうが、買主と売主の双方にとって、公正な立ち位置で診断をしてくれるのか、売れるように、不動産会社からの依頼で、売りやすい条件をまとめてきたり、逆に売りたい物件があるから、厳しい内容を提示してこないとも限らない。 この法律の施行自体は、買主の購入意欲を新築だけではなく、中古物件への可能性が増えることが期待できるが、正しく実施されるかは疑問が残ります。いかに、診断書を出す建築士を本当の意味で第三者であることを担保することができるかが、この法律の意味を見出すことができるか左右していくものと思われます。 住宅診断自体は、現在、民間の専門業者が行っているが、普及のためには、診断書のフォーマットやルールを明確化すること、業者によって内容が異なってはいけないので、何を明確にするか項目の洗い出しなどの基準や先ほどの公正性の担保が成否を分けるものと言えます。