等価交換でマンションを建てた場合、譲渡税は無し?

 2015-03-16   等価交換 | マンション | 賃貸 | 譲渡税 | 計算
★等価交換(立体買換え)とはこんな制度
 交換差金のない交換を「等価交換」と呼ぶのですが、これとは別に「等価交換」と呼ばれる特例があります。税務上の正式名称は「既成市街地等ないにある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換えの場合の譲渡所得の階税の特例」という大変、長く覚えづらいものです。以降、通常の等価交換と判別しやすいように「等価交換(立体買換え)」と呼称します。
 「等価交換(立体買換え)」は、大きく分けて「特定民間再開発事業による中高層耐火建築物の建設の為の特例」と「中高層の耐火共同住宅の建設の為の特例」とがありますが、ここでは「中高層の耐火共同住宅の建設の為の特例」について説明します。
 「等価交換(立体買換え)」とは、東京や大阪などの特定の地域(既成市街地等およびそれに準ずる区域)において、立体的な土地の有効活用を推進するために、設けられている特例です。具体的には、特定の地域に土地を所有している人が、いったんマンション業者にその土地(または、建物。以下、「土地等」という)を売却し、その土地の上に建築されたマンションの一部(一般的には数室)を買い取るという形態です。

【既成市街地等の区域】
①首都圏の既成市街地(東京都の特別区および武蔵野市全域、三鷹市、横浜市、川崎市および川口市の区域の一部の区域)
②近畿圏の既成市街地(大阪市の全域、京都市、守口市、東大阪市、堺市、神戸市、尼崎市、西宮市および芦屋市の区域の一部の区域)
③中部圏の名古屋市の朽木の一部の区域

【既成市街地等に準ずる区域といて指定された区域】
◆埼玉県
川口市、さいたま市、所沢市、春日部市、上尾市、草加市、越谷市、蕨市、戸田市、鳩ケ谷市、朝霞市、志木市、和光市、新座市、八潮市、富士見市、三郷市
◆千葉県
千葉市、市川市、船橋市、松戸市、野田氏、佐倉市、習志野市、柏市、流山市、八千代市、我孫子市、鎌ヶ谷市、浦安市、四街道市
◆東京都
特別区、八王子市、立川市、武蔵野市、三鷹市、青梅市、府中市、拝島市、調布市、町田市、小金井市、小平市、日野市、東村山市、国分寺市、国立市、西東京市、福生市、狛江市、東大和市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市、多摩市、稲城市、羽村市
◆神奈川県
横浜市、川崎市、横須賀市、平塚市、鎌倉市、藤沢市、茅ケ崎市、逗子市、相模原市、厚木市、大和市、海老名市、座間市、綾瀬市
◆愛知県
名古屋市、春日井市、小牧市、尾張旭市、豊明市
◆大阪府
大阪市、堺市、岸和田市、豊中市、池田市、吹田市、泉大津市、高槻市、貝塚市、守口市、牧方市、茨木市、八尾市、泉佐野市、富田林市、寝屋川市、河内長野市、松原市、大東市、和泉市、箕面市、柏原氏、羽曳野市、門真市、摂津市、高石市、藤井寺市、東大阪市、四条畷市、交野市、大阪狭山市
◆兵庫県
神戸市、尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、川西市

 事業用資産の買換え特例とは異なり、売却する土地等の用途や所有期間に制限はありませんから、空き地であってもかまいません。また、事業用の買換え特例が売却代金の8割までしか買換えを認めていないのに対して、「等価交換(立体買換え)」は、住居用の買換え特例と同様に、売却代金の100%の買換えができます。
 なお、「等価交換(立体買換え)」により取得するマンションは、3階建て以上のものでなければならず、また、全体の1/2以上が住宅でなければなりません。(店舗などが建物全体の1/2を超えた場合はNG)。
 「等価交換(立体買換え)」により取得した後は、住居用または、事業用として利用することが要件となっているので、自分が住むか、賃貸するか、自分で商売するか、とにかく利用すれば問題ないという事になります。

★譲渡税の課税はどうなっているか
 「等価交換(立体買換え)」を使った場合、マンション業者に売却した土地の価格と買い取るマンションの価格が同額であれば、等価ということで譲渡税はゼロになります。
 なお、提供する土地等と取得するマンションの価値が見合わなかったため、たとえば1,000万円を差金としてもらうことになると、その現金で取得した部分に譲渡税が課税されます。
 一般的には、土地等の売却価額に見合うマンションの部屋を取得するので、お金による清算は出てこないケースが多いようです。
 「等価交換(立体買換え)」の本来考え方は、地主がマンション業者に一旦、土地等を売却して、その土地の上に建築されたマンションの一部をマンション業者から買い取るということなのですが、結果的には、土地の一部と建物の一部をあたかも交換したかのような形態となるため、等価交換と呼ばれているのです。

【等価交換(立体買換え)の対象となる「中高層の耐火共同住宅」とは】
①譲渡した土地の上に建築される地上階数3以上の建築物であること
②耐火建築物または、準耐火建築物であること
③その建物の床面積の1/2以上がもっぱら居住用(人の住まい)として使用されているものであること
④譲渡資産の取得者(買主)が譲渡者、(売主)が建築したものである事
以上の4つの要件の全てを満たす建築物でなければ、なりません。

【「等価交換(立体買換え)」の対象となる地域】
 既成市街地等の区域および既成市街地等に準ずる区域として指定された区域は上述の表のとおりです。

★「等価交換(立体買換え)」を適用した場合の譲渡税の計算
「等価交換(立体買換え)」を適用する場合の計算式は次の通りです。
①譲渡収入
売却価額―取得するマンションの価格=A
(Aがマイナスの時は0)
②必要経費
(売却資産の取得費+譲渡費用)×A/売却価額
③特例適用後の売却益
①-②
④譲渡税
③×20%(短期譲渡の場合は39%)

【事例】
 Aさんが所有する時価6億円(買値6,000万円)の土地をマンション業者Bに売却して、Bが建築した9階建てのマンションのうち、7階、8階、9階の各部屋(区分所有権)とその敷地(共同持分1/3)に買い換えた場合の譲渡税はいくらか?
 なお、買替は等価としておこない、差金の授受はおこなっていない。

【Aさんの譲渡税】
①土地の売却価額:6億円
②取得するマンションの価額
4億円(建物7階~9階)+2億円(土地の持分1/3)=6億円
③ ①-② = 0 ∴譲渡税無し

★「等価交換(立体買換え)」も課税の繰り延べ
 「等価交換(立体買換え)」も「特定事業用資産の買換え」と同様に、課税の繰り延べです。
 先ほどの事例で言えば、Aさんは6,000万円で購入した土地を6億円で売却し、その6億円に見合うマンションを購入したというのが等価交換です。
 Aさんが取得したマンションの本来の購入代金は6億円ですが、税務上は元の所有土地の買値6,000万円が、Aさんが取得したマンションの買値となります。

【「等価交換(立体買換え)」のマンションの引き継ぎ価格】
①7~9階の建物部分の引き継ぎ価格
 6,000万円×4億円(建物価額) / 6億円(元の土地の時価)=4,000万円
②マンションの敷地の共有持分
 6,000万×2億円(敷地の共有持分価額) / 6億円(元の土地の時価)=2,000万円

 なお、「等価交換(立体買換え)」で取得したマンションの建物の減価償却は、4億円ではなく引継ぎ価額の4,000万円を基に計算していく事になるので、「等価交換(立体買換え)」で取得したマンションを賃貸する場合には、毎年の減価償却が極端に少なくなります。その結果、毎年の所得税、住民税が大幅にふえることになりますので、注意してください。

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